手島裕さんの手帳つくりキット
手帳は1年の間いつも手元にあるものだから、少々手間がかかっても自分らしいものを自分で作りたい。そんな人たちがきっといるはずと始まったのが手島裕さんの手帳倶楽部です。 縁あってその手帳倶楽部に参加したらば、これがなんともおもしろい。表紙の革を選んで、自分に都合良いレイアウトのページ内容を選んで、ポケット布を選んで、製本する糸を選んで(実はその糸も好きな4色を選んで1本に糸縒りしてもらったもの!)、そして、本紙を折って綴じていきます。 曲がりなりにも製本ということになると、素人が簡単に手を出せるものではないと思っていましたが、手島さんの工夫には目を見張るものがあって、ゆがまないように紙を折るための道具、糸綴じの際に手帳をひっくり返さなくても両面から見やすく固定する器具、まっすぐに裁断するための定規などを、全部自作で用意していたのです。 だから、確かにそれなりに時間はかかるのですが、順番にやっていきさえすれば、必ず完成に向かうのです。 数時間後には、思い通りの手帳を自分で作り上げたという充実感で、誰もが興奮しているのです。 一生懸命仕上げた手帳は、予定を書き込む前から愛着に溢れています。 1冊目を作った人が、今度は大切な人へ贈りたいからと2冊目を作りたがることもしばしばとか。 しかし、この喜びをもっと多くの人に体験してもらう方法はないだろうか? いずれは、パーツをセットにした手作りキットを製品化したいと、ぽろりと漏らした言葉を聞くやいなや、「それ、倉敷意匠とやりませんか!」と思わず叫んでいたのです。 そもそも手島さんの手帳作りの発端はと言うと、娘さんが革のバッグを欲しいと言い出して、当時それを買ってやる余裕がなかったので、革のはぎれを買ってきて、見よう見まねで作ってしまったところから始まります。初めてながらなかなかの出来に大満足しつつ、残りの革で作った小さな手帳がさらに可愛らしくて、ここから、手帳作りにのめり込んでいきました。 なにしろ、自分で作ろうと決めてから、思い通りのかたちを実現するまでのこだわりようが尋常じゃないのです。 以前に、空き家になっていた納屋を改装して奥様とレストランを開くことになった時も、店本体の内装はもちろん、水道工事もこなし、庭や石段、什器の棚や机まで全部自分で作り始め、なんと6年の歳月を待たせてしまったというツワモノなのです。 ところが、手帳のキット化企画が始まると同時に難問が続出です。根本的に手帳倶楽部のワークショップと違って、そばについて指導してくれる講師はいないわけですし、便利な器具も用意されていません。説明書だけをたよりに誰もが完成に漕ぎ着けないといけないのです。 それでいて、ほんとうに使える機能的な手帳でなければなりません。実際に使われるシーンを考えて考えて、作り方を繰り返し試して、パーツの選択肢を絞り込んで、手島裕さんの「手帳つくりキット」第1弾は、大いなる試行錯誤のすえ、ようやく出来上がったのです。 |